大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)105号 判決

一 原告の主張する請求原因事実のうち第一項および第二項の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告の主張する取消事由の有無について判断する。

(一) 取消事由(一)について

原告は、畳縁地については、有色糸およびラメによつて縫取状に文様を連続模様として表わすことが出願前より広く知られていたという事実はない旨主張する。

しかしながら、審決がこの種物品において云々と述べているのは、その前後の文脈に徴し、広く一般織物地の分野における模様の利用状況を述べたにすぎないものであつて、それらの模様がすべて畳縁地に用いられていたとするものではないと解するのが相当である。そして、畳縁地を除く一般織物地において有色糸、ラメ等を使用して縫取状に文様を連続模様として表わすことが本件出願前より広く知られていたことは、原告の認めるところであるから、審決の認定には誤りがなく、原告の主張は採用し難い。

(二) 取消事由(二)について

成立に争いのない乙第一号証から第四号証までによれば、多くの色糸を用いて模様を織り出した厚地の絹紋織物を錦といい、帯地、表具地、能衣裳などに用いられる高級織物であること、錦にはその組織文様のあらわし方によつて糸錦、繧〓錦、蝦夷錦、金襴錦などの種別があること、そのうち繧〓錦は畳縁にも用いられ、繧〓縁と呼ばれて古くから周知であることが認められる。このように錦織地を畳縁に用いることが古くから広く知られている以上、織物地と畳縁地とは技術的に同一の分野に属するものといわなければならない。

畳縁地と一般織物地とが原告主張のごとくその使用目的も取扱業者も異なるとしても、また畳縁地の使用態様からして一般織物地の模様がすべて畳縁地の模様として通用するものではないとしても、畳縁地に織物が使用されている以上、一般織物地における広く知られた模様が畳縁地における独自の模様として排他的に尊重されなければならないほど畳縁地に特殊性があるとはとうていいえない。

そして、織物地において有色糸およびラメなどを使用して縫取状に文様を織出す手法が本願出願前より周知であることはさきに述べたとおりであり、斜め菊菱文が古来より代表的な模様の一つであることは原告の認めるところである。

してみると、これらの手法模様からなる本願意匠は一般織物地において極めて普通に知られている模様を畳縁地に表わしたものにすぎないといわざるを得ず、当業者間における通常の知識を有する者が容易に創作できたものと解するのが相当である。したがつて原告の主張は採用し難い。

三 以上のとおり、本件審決には原告主張の違法はないから、その取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却する。

〔編註〕 本件における審決理由の要点は左のとおりである。

本願意匠は、意匠に係る物品を畳縁地としたもので、その形態は、黒色の帯状細巾地の両耳部に黄色条模様を、その間に金色糸及びラメによつて縫取状に菊菱文を斜め菱状の連続模様として夫々表わしたものであることが願書に添付の図面代用見本片及び願書の記載によつて認められる。

これに対し、原査定は、この出願前より菊菱模様を表わした織物地はきわめて普通に知られており、本願意匠は菊菱模様を畳縁地に表わしたもので、容易に創作することができた意匠であることを理由として登録を拒絶すべきものとした。

この種物品において有色糸及びラメによつて縫取状に文様を連続模様として表わすことは出願前より広く知られたところであり、菊菱文も従来より周知であり、文様を斜め菱状の連続模様とすることも又極く普通の手法と認められる。したがつて、本願意匠は、上記事実に基いて当業者間における通常の知識を有する者が容易に創作できた意匠であり、意匠法第三条第二項の規定に該当し、登録することができない。

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